相続等にまつわるブログや小話
036 非居住者・役員交代 3題 平成18年7月
-そのⅠ-
日本の税は外国にくらべ負担が大きいようです。そのために住所を外
国に移し、より低い税負担を享受する法人や富裕層がいます。所得税で
は最近も話題になったハリーポッターの翻訳者。過去にもメガネ屋サン、
贈与税では貸金業者のオーナーが税務当局に、居住者としての課税を指
摘されています。そもそも居住者・非居住者とはいったいなんでしょう。
所得税法では、居住者とは日本国内に住所があり1年以上居所を有す
る個人を指すとしています。住所とは生活の本拠をいい、住居、職業、
親族の有無、資産の所在などの客観的事実から総合的に判定され、住民
票を移していても生活実態から判断されます。そして非居住者は「居住
者以外の個人」をいいます。 また居住者は、日本国内外の所得の税を納
める義務があり、非居住者は国内で稼いだ所得(国内源泉所得)のみ課
税されます。ところで、ハリポタ訳者は外国に居住しているとして外国
で納税し、日本では申告していません。国内源泉所得の所得税も外国で
控除され、結局日本国へ納税額はありません。しかし国税局は「実質的
に日本に居住実態があったと認定し」約35億円の申告漏れを指摘したと
いうことです。日本の所得税負担は最高で50%、かの国は40%だそう
です。居住実態の最終結論は先のこととしても、最近富裕層が税逃れの
ため(?)に海外に移住しているとの報道もあります。一生懸命働いて稼
いだ資産に対し税金が少ないことを願うのはよくわかります。でもハリ
ポタ訳者の稼いだ資産のほとんどは、日本国民が本を購入してくれたか
らではないですか。居住を争われるほどに来日(期間)も多いわけで、
多少税率が高いからといって日本国に納税しないという感性はいかがな
ものか。純粋に海外移住をしたい方はそれでよいと思います。このよう
に思うのは、持たない者のひがみでしょうか。
-そのⅡ- 役員交代と退職慰労金
事業承継や業績・経営形態の変更などから代表取締役や取締役を交代
することがあります。しかしその後の扱いによっては「退職慰労金が認
められるない場合もある。」と京都地裁が、判示しました。(控訴中)
ここでも形式的には代表役員を交代し報酬を激減した場合であっても、
実質退職には当たらないと判断されました。
-そのⅢ- 特殊支配同族会社
今年の税制改正で特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度が導
入されました。要件をはずせば適用除外となるためいろいろと模索され
ているようです。要件の1つ持株等割合の90%以上の基準について、親
しい第三者に11%以上の株式等を保有させれば、特殊支配同族会社から
外せるという考えもあります。
①従業員持株会が株式を持つ
②顧問税理士等が株式を持つ
③親族の範囲外の近い関係者が株式を持つ、
などが想定されます。しかしこれには注意が必要です。形式は整っても
実質はどうかで判断する「見なし規定」が税法に規定されているからで
す。 ただ、会社経営や形態を見直し、従業員の経営参加意識の向上の
為に持株会を設立したり事業承継を考えるきっかけにするにはよい機会
です。